2004年5月

5月8日 返しておくべき借り

朝からの局地的な雨も上がった、曇天模様での子供の日の埼玉スタジアム、レッズの選手たちは首位に食らい付くための足掛かりとしてアントラーズを今季初の無失点、最小失点差で打ち破り、そして僕は昨年セカンドステージ最終節での悪夢を振り払うべく、シャッターを切りまくりました。

以前の日記にも書きましたが、昨年のセカンドステージ最終節において僕は試合途中にして大雨の影響もあり、カメラを作動不能にしてしまい、その日持っていったフィルム3本のうち、実に2本を失う結果となりました。まあ、残った1本が前半のものでレッズがこちらに向かって攻めてくるものであったこともあり昨年撮った中でも最も良く撮れた1本になったことは皮肉なことではありましたが、あの日味わわされた屈辱というか、自分に対する腑甲斐無さは、やはり同じ条件でしか拭うことの出来ないものでした。

ジュビロ戦同様、いやそれ以上にアントラーズとの試合には雨が絡みます。僕が実際にスタジアムに行った試合だけでも2001年のファーストステージ、2002年のナビスコカップ予選のホームゲーム、2003年のナビスコカップ決勝、そしてセカンドステージ最終節があります。それ以前の試合でも、雨の試合映像はいくつも探し出せます。最早、レッド・ダービーは雨中で行われるものといっても間違いではない程になっています。そして、雨の記憶と同様にレッズはリーグ戦において5年、アントラーズには勝っていませんでした。しかし過去においては天敵ともいうべき相手ですが、大型補強も敢行され、組織も一新されたレッズにおいてそんなことは言っていられません。ましてやナビスコカップ予選のエスパルス戦でどうしようもない試合をし、闘莉王選手が初先発したサンフレッチェ戦で今季初の無失点試合(無得点でもありましたが)でようやく、守備に関して計算ができる状態になったときですので、弾みをつけなければいけないチーム事情としては最早、対戦相手がどこというのは関係なかったはずと思われます。

この試合、選手からもその気合いの入り具合が良く分かりました。闘莉王選手が髪を赤く染めているのは以前から知っていましたが、アレックス、まさか赤坊主とは…!吃驚しました。月並みな表現でいえば、本当にデニス・ロッドマンに見えました。僕個人としてもどうしても余所の選手、というイメージで見ていたアレックスですが(闘莉王選手は何故か移籍当初からウチの選手として見れたんですが)、あの頭を見て本当にウチの選手として見られるようになりました。左サイドということもあって、写真を狙いやすかったですね。やっぱりカメラマンとしてはこの試合で押さえておくべき被写体のひとりだったと思います。

そしてこの試合のもうひとりの主役ともいうべき闘莉王選手。実際に見ると本当に良い選手だと思います。プレースタイルもさることながら、最終ラインからあれだけ声を出して他の選手を鼓舞できる選手が今までのレッズでほとんど見たことがなかったので、それだけでも存在としては重要ですし、サイドへのフィードも正確で、当たりにも強く、チャンスがあれば自分でも上がっていくという(この試合に関しては足のせいか少し重く見えましたが)のはもう、理想のセンターバックではないでしょうか。往年のブッフバルト、そして僕の好きな選手であるルシオを彷佛とさせるようなプレーにただただ、驚かされました。本当に良い選手を獲得したものです。見ていて楽しい選手が、またひとり増えた感じです。

この試合に関しては、ここ数試合で見られた不安点はほぼ解消されたように見えました。闘莉王選手がラインを高くコントロールすることによって全体がコンパクトになっていましたし、サイドに対してボールが供給されることによって攻撃に幅が出ました。特に長谷部選手平川選手の右サイドを抉る様は相手にとって脅威であったでしょう。残念なのは左サイドはアレックスのスタイルなのでしょうか、どうもアーリークロスや中に切れ込んでいく動きが目立って深い位置まで抉ってのセンタリングが少ないのが不満ではありましたが、段々フィットしていくものと思います。

トップ下にいた山瀬選手も色々な所に顔を出していましたな。あるときは最終ラインにまで下がって守備をしたかと思えば、エメルソンを追い越してシュートを狙う、といった動きも見えました。ただ、まだ消えてしまう時間帯が多いのが難ですが、長谷部選手と共存しても機能することがわかったのは収穫であったと思います。また、守備的MFのふたりも献身的でした。タイプが被っているのでゲームメイクの上では不満もありますが、その分後ろの選手の攻め上がりにも対応できる感じですので、酒井選手鈴木選手の組み合わせも今後多く見られるのではないでしょうか。

最後に、坪井選手が前節に続いてキャプテンだったのですが、なんというか、似合ってましたな。終盤で山田選手が交代出場したのですが、結局最後まで坪井選手がキャプテンマークを巻いてプレーしました。これが山田選手に対しての「キャプテンを任せておけない」という意思表示であり、リーダーの自覚が出て来たということであるならばチームとしては良い方向に進んでいると思うんですけどね…。そして、それ以上に山田選手、ブッフバルト監督の信頼を一日も早く取り戻して欲しいと思います。本気の山田選手に適うような選手は、おそらく国内にはいないはずですから。

アントラーズの出来が悪かったことを差し引いても、この日のレッズは最高の試合運びをしたと思います。そして大雨の当日抽選にも参加し、ふらふらながら満足した気持ちで帰宅した僕にとっても、数日後にやって来たものは大いなる喜びでした。3本のフィルムに収められていたのは、レッズの選手たちの必死な姿でした。どうやら僕も選手たちに触発されたようです。間違いなく、現時点で今季最高の出来の写真たちでした。昨年の借りは、十分に返せたと、いっておきます。